令和7年度第7回STPPセミナー

令和7年度第7回STPPセミナー
2025/06/02

発表者:樫崎太希 (M2)
発表タイトル:Expanding MRI Heating Models for Stratified Accretion Disks to Include Parker Instability
本研究では、ブラックホールなど中心天体の周囲で降着円盤が作る高温希薄領域「円盤コロナ」に注目し、磁気回転不安定(MRI)が駆動する乱流がイオンと電子をどのように加熱するかを解明することを目的とする。MRIにより円盤に注入された大スケールのエネルギーは乱流カスケードで小スケールへ転送され、波–粒子相互作用によって粒子が加熱されると考えられるが、既存モデルは鉛直方向の成層を無視しており、イオン/電子加熱比 Q_i/Q_eを概ね2と予測する。そこで本研究は鉛直成層を取り入れた新しいMRI乱流モデルを構築し、成層効果や他の不安定性が加熱特性に与える影響を評価し、円盤コロナのX線観測の解釈精度を高めることを目指す。これは宇宙で最も効率的なエネルギー変換現象の理解を進め、高エネルギー放射メカニズムの統一的説明に資する成果となる。

発表者:齋藤 幸碩(STAFF)
発表タイトル:Contribution of the background plasma number density in nonlinear wave–particle interaction
地球だけでなく木星でも観測されるホイッスラーモードコーラス電磁波動の発生機構を理論的に解明することを目指している。地球では温度異方性をもつ数十keV~数百keVエネルギーの電子がコーラス波を励起することが知られているが、木星ではさらに遠心力によって形成される特殊な電子速度分布や磁軸の傾きが影響すると考えられる。本研究では、これら木星固有の電子分布を非線形共鳴理論に組み込み、地球と木星の違いが波の成長率・空間分布・周波数帯に与える影響を計算することで、木星磁気圏における波動–粒子相互作用の統一的理解と放射線帯ダイナミクスの解明に貢献する。