宇宙空間でイオンが電子より高温になる理由を解明
太陽から吹き出る太陽風やブラックホールを取り巻く降着円盤はプラズマで出来ています。宇宙に存在するプラズマは高温・希薄であるため、プラズマを構成するイオンと電子の間の衝突がほとんど起こらない無衝突状態にあります。そのためイオンと電子は直接相互作用をせず、異なった温度を取ることが可能です。実際に、これらの天体現象ではイオンの方が電子より遥かに高温になっていることが分かっていました。しかし、なぜイオンが電子より高温になるのか?この疑問の答えは長年の未解決問題でした。
当研究室の川面洋平助教を中心とした国際チームは、無衝突プラズマ乱流のシミュレーションによりこの問題を解決して、米国の科学雑誌「Physical Review X」に発表しました。プラズマの乱流中には縦波的ゆらぎと横波的ゆらぎが存在していますが、これまで行われてきた研究では横波的ゆらぎのみが考えられてきました。川面助教らは、世界で初めて縦波的ゆらぎを含む無衝突乱流を計算して、イオンが縦波的ゆらぎのエネルギーを選択的に吸収することで電子より高温になることを突き止めました。この結果は、2019年に公開されたイベントホライズン望遠鏡によるブラックホールの影の撮像結果を解析する際にも重要となります。詳しくは東北大学、理学研究科、学際科学フロンティア研究所、国立天文台および国立天文台天文シミュレーションプロジェクト のプレスリリースをご覧ください。