Kinetic energy transfer during polarity reversals in a numerical dynamo simulation
地球・惑星内部の物理に関する専門誌 Physics of the Earth and Planetary Interiors で、以下の論文を発表しました。
地球には、深さ約2900~5200kmの範囲に、鉄を主成分とする液体で満たされた「外核(outer core)」と呼ばれる球殻状の領域がある。この外核内で起こる導電性の液体の流れにより地磁気は生成されていると考えられている。地磁気はダイポール磁場で近似でき、その極性は概ね安定している。しかし、古地磁気観測により、極性が入れ替わる「地磁気逆転」が繰り返し起きてきたことがわかっている。しかし、古地磁気観測点数の制約や、外核内の流れの直接観測が不可能であることにより、地磁気逆転のメカニズムは未だ解明されていない。地磁気逆転メカニズムの調査は、1995年以降のシミュレーションにより行われてきた。その結果、逆転中には赤道面について反対称な流れが成長し、逆転へ寄与している可能性が示された。本研究の目的は赤道反対称流の成長メカニズムを明らかにすることである。シミュレーションを実施し、逆転中の反対称流に対するエネルギー輸送量を算出した。その結果、逆転中には慣性力によるエネルギー輸送が最も大きく増加し、反対称流成長に寄与することがわかった。一方、地球の外核では慣性力は主要なダイナミクスには関与しないと考えられている。本研究の結果は、外核のように慣性力が主要な役割を果たさない環境においても、逆転時に一次的に慣性力が強く働くことで逆転に寄与する可能性を示唆している。