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研究概要・目的

研究課題の背景

ジオスペースと呼ばれる地球周辺の宇宙空間の中には、放射線帯(ヴァンアレン帯)と呼ばれるMeVを超える電子が、地球の磁場に捕捉されている領域が存在します。近年、この放射線帯の相対論的エネルギー電子の起源として、プラズマ波動による電子加速過程が考えられ注目を集めています。

そしてこの電子加速過程は、きわめて非線形性が強い現象であることも計算機シミュレーションなどからわかってきました。この波動粒子相互作用過程を人工衛星によって宇宙空間で直接検証することは、従来の技術では時間分解能の制約から不可能でした。しかし、本研究グループによって、粒子と波動の計測器をμ秒オーダーで連携させることで、波動の位相変化と粒子個々の捕捉タイミングから波動—粒子間エネルギー交換フラックスの直接計測を実現する計測手法が提案されました。これが波動粒子相互作用解析装置(Wave Particle Interaction Analyzer: WPIA)です。

WPIA観測を宇宙空間で実現することにより、宇宙空間でプラズマ波動がどのようにして生まれ、そしてどのように粒子を加速するかを定量的に明らかにすることが可能になることが期待されています。

参考図書のご紹介
ジオスペースをはじめとする太陽・惑星間空間での物理過程について学ぶ事のできる図書をご紹介します。
太陽地球圏(現代地球科学入門シリーズ)」(著者:小野高幸【本研究課題研究代表者】・三好由純【本研究課題研究分担者】、共立出版、2012年8月出版)

目的

宇宙空間で起こる様々なプラズマ波動-粒子相互作用のうち、本計画ではホイッスラーモード波動と呼ばれるプラズマ波動が、放射線帯の相対論的エネルギー電子と相互作用する過程に注目しています。ホイッスラーモード波動は、エネルギーが数十keV程度のプラズマシート・環電流電子によって生起され、さらにエネルギーが高い電子群を加速することで放射線帯の形成に寄与していると考えられています。

本研究では、このホイッスラーモード波動と粒子の相互作用を解明するために、人工衛星搭載のソフトウェア型WPIA(S-WPIA)を世界で初めて開発し、ロケット実験および日本が計画しているジオスペース探査衛星ERG(2015年打ち上げ予定)に搭載します。そして、宇宙空間におけるプラズマ波動と粒子相互作用過程を直接計測する技術を確立します。

また、ハードウェアの開発に加えて、数値シミュレーションにもとづいて最適なS-WPIA観測・解析アルゴリズムを決定するS-WPIAシミュレータの開発も行います。さらに計算機実験を通して、プラズマ波動の励起と粒子加速の素過程を研究し、波動と粒子の間のエネルギー交換過程の詳細を明らかにしていきます。

達成される成果

本研究によってS-WPIA計測技術をハードウェア・ソフトウェア両面で確立します。また、開発したS-WPIAを、ロケット実験およびERG衛星に搭載し、S-WPIA技術を実証するとともに、宇宙空間でのプラズマ波動—粒子間のエネルギー交換過程の直接観測を世界で初めて実現します。特にERG衛星におけるS-WPIA観測では、ホイッスラーモード波動による放射線帯の相対論的エネルギー電子の加速過程に決定的な理解を与えることが期待されます。

本研究で確立される飛翔体によるS-WPIA計測技術は、宇宙空間プラズマダイナミクスの理解を飛躍的に拡大させる高い意義を持つと同時に、宇宙空間プラズマ物理学の新たな観測手法として、今後の宇宙空間プラズマ研究を牽引する役割をも期待させるものです。

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