衛星・地上観測に基づく磁気圏・電離圏結合過程の研究【観測データ解析】
M2 深見 岳弘
地球の地表から高度約数百 kmの領域は「電離圏」と呼ばれ、電荷を帯びた粒子の集まり(=プラズマ)が存在しています。また、電離圏はさらに高度の高い「磁気圏」と呼ばれる領域と密接な関係があります。美しいオーロラも、磁気圏から降ってきた電子が電離圏で引き起こす光の現象です。オーロラがよく見られる高緯度帯(北欧やカナダ、南極の一部など)をオーロラ帯と呼び、それより少し緯度の低い地域をサブオーロラ帯と呼びます。
電離圏のサブオーロラ帯では、数百~数千m/sという高速のプラズマの流れが発生することがあり、この流れはSubauroral Polarization Stream (SAPS)と呼ばれます。SAPSはGPSの誤差や人工衛星との通信異常の原因になると考えられており、私達の生活にも関わる現象です。その発生メカニズムには、電離圏のみならず磁気圏の状態も深く関係していると考えられていますが、詳細は未だはっきりしていません。
私はSAPSの中でも、プラズマ流速の変動を伴うSAPS Wave Structure (SAPSWS)という現象に着目した研究を行っています。研究手法は、人工衛星(あらせ衛星・DMSP衛星)や地上レーダー(SuperDARN)の観測結果の解析です。私はこの現象について、磁気圏の状態をあらせ衛星で、電離圏の状態をSuperDARNレーダーやDMSP衛星で同時に観測した結果を解析し、磁気圏に存在するプラズマの圧力状態がSAPSWSの発生に重要であるとの示唆を得ました。
上図: ジオスペース探査衛星「あらせ」
https://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/current/erg.html
下図: Super Dual Auroral Radar Network (SuperDARN)
https://artsandscience.usask.ca/news/articles/2819/The_space_radar_25_years_of_SuperDARN
(研究室に興味を持たれた方へ)
独力では絶対に得られない観測データ(例えば、人工衛星の開発・打ち上げ・運用…にはたくさんの人の努力や凄まじい費用のもとに行なわれます)を、観測機器開発やデータ解析のプロフェッショナルである教員と議論しながら解析できる環境は、研究室に所属する最大の魅力の一つだと思います。