地中レーダー観測による月表層進化の理解

D1 神田恵太朗

 

月は地球と違い大気や風、液体の水がなく、それらの影響による土壌の進化がありま せん。代わりに、月の表層は隕石衝突と太古の火山活動によって進化してきました。 特に隕石衝突では、クレーターや衝突盆地(月の表面に見える円形の窪地)を形成し たり、硬い岩盤を砕いてレゴリス(月面を覆うサラサラとした砂のようなもの)や岩 石を生成したりします。 私の研究では、地中レーダー(ground penetrating radar: GPR)と呼ばれる技術 を用いて、月表層の探査をしています。地中レーダーは電波を用いた地下計測技術 (図:地中レーダー観測の原理)で、地球では道路下の空洞検出などにも用いられて います。 私は、月面で運用されている地中レーダーのデータを解析し、過去の隕石衝突で形成 された岩石の大きさとその分布を調査しています。岩石の大きさとその分布は「月面 がどれほど長い間隕石衝突にさらされてきたか(つまりどれだけ古い月面なのか)」 を示す重要なパラメータです。また、効果的なデータ解析方法を調べるために地中 レーダー観測のシミュレーションにも取り組んでいます。