地球ダイナモシミュレーションを用いた地磁気逆転メカニズムの研究
研究生 解良 拓海
地球磁場の逆転
地球の半径のおよそ半分ほど深くまで潜ると、鉄の液体で満たされた「外核(outer core)」と呼ばれる場所があります。ここでは、鉄の液体が流れることで地球の磁場(地磁気)が作られています。この磁場は人類の歴史では安定してきましたが、実は地球の長い歴史の中では、磁場のN極とS極が入れ替わる「地磁気逆転」が何度も起こっていたことがわかっています。
では、どうしてそれがわかるのでしょう?それは火山が噴き出した溶岩の性質に関係します。溶岩は冷えて固まるとき、地磁気の向きを記録します。この記録を海底火山で調べると、火山の噴火口から遠ざかるにつれ、記録された磁場の向きが「北→南→北…」と何度も切り替わっていることがわかります。これは、地磁気が逆転してきた証拠です。
海洋底の溶岩流に記録された古地磁気の海上測定(Gee and Kent, 2007)
なぜ地磁気逆転が起こるのか?
しかし、なぜこうした逆転が起こるのかは、まだはっきりとはわかっていません。過去の磁場の変動を正確に知ることは難しく、またそもそも磁場の発生源である外核の流れを測定することは不可能だからです。そこで私たちは、鉄流体の流れと磁場の生成を計算するシミュレーション(卒業生開発)を行い、地磁気逆転の仕組みを解明しようとしています。
スーパーコンピュータを使って計算すると、約3日間の計算で一回程度の頻度で逆転が再現されました。さらに、逆転が起きるときには、普段と違う特徴的な流れが現れることがわかりました。普段は地球の自転の影響で、流れは赤道に対して対称になっていますが、逆転が起きるときには、赤道に非対称な流れが現れるのです。このような流れは過去の研究の通り、逆転に重要な働きを持つことが確認できました。
今後の研究では、この特別な流れがなぜ発生するのか、そしてそれがどのように地磁気逆転を引き起こしているのかを詳しく調べていく予定です。地球や惑星内部の謎を解き明かすこの研究は、地球の過去や未来を知るための鍵となるかもしれません。