惑星・衛星
太陽風と惑星の相互作用
太陽風と大気散逸現象
太陽から絶えず吹き出している超音速のプラズマ流「太陽風」は、惑星の超高層大気、もしくは惑星の固有磁場と相互作用し、惑星周辺のプラズマ・電磁環境に様々な影響を及ぼします。
例えば、惑星の大気が宇宙空間に剥ぎ取られる「大気散逸」現象は、その一例です。
惑星周辺環境のシミュレーション
近年の計算手法と計算機能力の急速な発達により、惑星周辺のプラズマ・電磁環境をコンピュータ上で再現できるようになりました。
当研究室では、プラズマを磁気流体として扱う「磁気流体力学」シミュレーションや、一部を粒子として扱う「ハイブリッドシミュレーション」など、様々な手法を用いて、世界最先端の惑星周辺環境のシミュレーション研究を進めています。
水星磁気圏の磁気流体力学シミュレーション
木星イオ相互作用
相互作用によって起こること
1964 年に木星から到来する波長10m帯の電波が衛星イオの軌道運動に関連していることが同定されて以降、木星磁気圏とイオの相互作用は研究されてきています。
イオの軌道運動によって誘導される電場は、図の矢印の方向に電流を流し、イオと木星電離圏の間を電流が流れます。電流を担う電子は電場によって磁力線に沿って加速され、木星大気に降り込みます。
木星では地球と同じようにオーロラが観測されていますが、その一部はこのようにして木星に降り込んだ電子が励起したものです。
木星探査機
木星に見られるオーロラ
イオを介して流れる電流
数値シミュレーションの役割
木星イオ相互作用は方程式を解析的に解くことが難しい、電磁的、化学的変化が複合的に伴うものです。遠隔観測では木星やイオ軌道近傍に、直接観測では探査機の軌道上に観測範囲が制限されてしまいます。そのため相互作用の全体像の理解には数値シミュレーションによる研究が欠かせません。
かぐや(SELENE)衛星
LRS(月レーダーサウンダー)
「かぐや」は月の起源や月周りの環境の解明を目的として2007年9月に打ち上げられ、2009年6月に運用を終えた日本初の月探査衛星です。
14種類の科学ミッションがあり、本研究室では主にLRS(月レーダーサウンダー)を担当しています。
LRS概略図 © JAXA
月地下構造
「かぐや」のLRSという装置を用いて、月の地下構造が研究しています。LRSは、人工電波を月面に向かって照射し、跳ね返ってきた電波を再び受信することで月地下の地層構造を検出します。
月周辺プラズマ環境
LRSはその他に、自然プラズマ波動の観測も行っています。また、「かぐや」のMAPという粒子・磁場観測器なども用いて、月周辺のプラズマ環境の研究もしています。