惑星固有磁場の成因:数値ダイナモシミュレーション

 地球の固有磁場は、外核で生じるダイナモにより生成・維持されていると考えられています。外核は鉄を主成分とする金属流体により構成されています。外側境界である核-マントルからの冷却により、外核には地球中心から離れるにしたがって温度が下がっていく温度勾配が存在し、また、固体の内核は冷却に伴いゆっくりと成長しています。この温度勾配と内核-外核境界で外核に取り残される軽元素(酸素など)に起因する不安定により外核中には対流が発生して、ダイナモを駆動するエネルギー源となっています。外核ではどのような条件が満たされる時に対流が生じて、ダイナモにより磁場が生成・維持されるのでしょうか。惑星の固有磁場の成因を理解するという地球物理学的観点に加えて、自転する球殻中での熱対流という物理の基本問題としても、ダイナモ研究は重要な意義を有しています。
 残念ながら、地下2900 kmから始まる外核の対流を直接観測することはできません。外核で生じるダイナモを研究する手法として、計算機シミュレーションが重要な役割を果たしています。当研究室では数値ダイナモ公開コード「Calypso」を用いたシミュレーション研究を行っています。Calypsoは自転する球殻を対象とした空間3次元の磁気流体力学シミュレーションコードであり、当研究室卒業生の松井宏晃博士(米国カリフォルニア大学デービス校)を中心に開発が進められています。Calypsoを用いたシミュレーション研究により、ダイナモにより生成・維持される磁場構造に対して内核の大きさが与える影響や、磁場双極子成分の卓越性が調べられています(西田有輝2017年度修士論文・2020年度博士論文)。

 

シミュレーション結果:コアマントル境界における磁場の動径方向成分(Calypso公式ページより)

 

シミュレーション結果:外核中での温度構造(Calypso公式ページより)