宇宙プラズマ中のサイクロトロン共鳴に関する理論研究

 

助教 北原 理弘

 

地上において空気の振動が私たちの耳に到達すると、私たちはそれを「音」として認識します。宇宙のプラズマ中を伝わる電磁場の振動(プラズマ波動)が人工衛星の計測器に到達すると「電波」として観測されます。私たちは宇宙プラズマ中で観測されるさまざまなプラズマ波動現象に共通する物理を、観測・シミュレーション・理論を通して研究しています。中でもプラズマ波動論の基礎となるサイクロトロン共鳴。磁場中を旋回運動している荷電粒子(図上の右)と同じく磁場の周りを回転するように伝搬する電磁波(図上の左)が出会った時、その2つは効率的にエネルギーのやり取りをすることが古くから知られていました。これをサイクロトロン共鳴といいます。このサイクロトロン共鳴が効率的に起こるときに、荷電粒子はどのような軌跡を辿るのだろうか、という素朴な疑問を数理的に解析することで、波動と粒子の相互作用に関する新しいモデルを構築しています。私たちの検討している数理モデルは、脈動オーロラを発生させる電子の挙動や、地球放射線帯の急速な発達、地球周辺のプラズマの加熱、プラズマ波動の発生メカニズムなどの様々な物理プロセスへの応用が期待されています。